ホーキングさんは多分、創造者なる方、すなわち神を頭で理解したかったのでしょう。
自然の探求を通して諸法則の奥に潜む神の御意を知りたかったのでしょう。
しかしそれは無理な話です。神を科学の場で考えた場合、この方は「隠れたお方」です。
使徒ヨハネが「神を見た者はいない」(ヨハ1:18)と言うとき、肉眼では見えないし頭で考えても分からないという意味です。
このことは望遠鏡でも顕微鏡でも見えないと言う意味です。あとは想像するしかありません。
ここから出てきたものが超能力を持った人間であったり、近づきがたい偉い人であったり、時には動物の姿、キツネであったり、自然物、大きな石であったりします。
昔、哲学者が神を考えました。自然界は何と秩序正しいのでしょうか。
太陽、月、星は毎日規則にしたがって運行しています。
ここから考え出されたのは宇宙の創造者、支配者、統一者でした。ですから神々ではありえません。
ただ一人でなければなりません。分裂があってはいけないからです。
その方は何物にも動かされない不動者です。ですから何かに影響されることはありません。
感情を持ってはいけないのです。そして終には「アノミア」すなわち無感動者となったのです。
人間の祈りや願いに動かされるようでは神ではあり得ないということになりました。
科学や理論が進展して来て、ようやく分かったことは「情報なくして知識なし」という事実です。
ですから学者たちは自然界の情報を掴むために日々研究しています。
目には見えない電子の情報が今日のICT社会(※注1)を実現しました。
スマホを持てば、「わたしはあなたのそばにいる」(これが「インマヌエル」の意味です)を実現させました。また医薬品、電化製品はどんどん新しくなります。情報はそれほど大切なのです。
行ったことのない国については何もわかりません。
食べたことのない料理の味は、言葉の説明では知りようがありません。
論より証拠、百聞は一見に如かずです。
でも人間がどんなに努力しても分からない情報があります。人間は今生きていることは分かります。
しかしこの命がどこから来たのかは分かりません。どこへ行くのか、すなわち死んだらどうなるのか分かりません。ところが道徳的感覚、良心が与えられています。
ですから善い行い悪い行いの決着がどこかで着けられるのではないかという思いはあります。
そうです、レストランに入ればレジの前を通らなければならないように、人生の終わりには清算の時があるのです。これが死の恐れの出どころです。
こうした不安定要因を持ったままで、魂に関する情報は何一つ持ち合わせてはいないのです。
ほとんどの人は、死について考えないように神についても無関心を装っています。
なぜなら情報がなければただ混乱するだけだからです。
「神を見た者はいない」のですけれども、「父のふところにおられるひとりご神」がもし神を教えてくださるのなら、ぜひぜひ教えてほしいと思っています。
ましてこの方が「救い主」だとすれば、なおのことです。
宗教がこんなにも人々の心に浸透しているのはそのためです。ところが実情はそうとはなっていません。
なぜでしょう。科学が発達し学問が発達し過ぎたからです。
人間のもっとも重要なものは知識とされています。ですから教育制度を整備し、小学6年間、中学3年間、高校3年間、大学4年間と16年間勉強期間が用意されています。
この結果、子供たちは早くから幼児の心を失い大人へと成長します。こうして自力で努力することが人生を達成する条件と考えられるようになりました。
幼子の心こそ神の前では最も必要な条件ですが、小学卒業の頃には幼児心はなくなり、神を必要としない人間となっています。
こうした人たちに「ただ信ぜよ」の理屈抜きの伝道が通じなくなってきているのです。
こうした現状を教えてくださったのがホーキングさんでした。
ところが今、人々の関心は宇宙に向かっています。宇宙の始まりまで分かってきました。宇宙のそもそもの根源にもう少しで届きそうです。
ところが不思議なことが起こり始めています。
宇宙には端があることが分かってきました。その端を「とんとん」と叩いてみると、神が顔を出していそうなのです。
「そんなはずはない」、宇宙を存在させる原理は必ずあるはずだと、多くの科学者は信じています。その信仰は知識人の心に根を下ろした宗教になっています。
「隠れているもので、あらわれないものはなく、秘密にされているもので、知られず、また現れないものはありません。」(ルカ8:17)封印を開くラッパが吹かれる時はもうそこまで来ているのです。
科学的理性と神への信仰は、昔から案外と腐れ縁で結ばれていたのです。「救い主はもう来ておられるよ」という情報が、日本の隅々にまで届けられるように、僕はまだまだ頑張らなければならないと思っています。
インマヌエル浦和キリスト教会
協力牧師 新垣重夫
※注1: Information and Communication Technology(情報通信技術)
コメントをお書きください